「仕事はとにかく量をこなせばいい」 そう思っていませんか?
実は、トヨタ生産方式(TPS)では、必要以上に作ること=ムダとされています。
それが「作りすぎのムダ」です。
一見「生産量が多い=効率的」に思えるかもしれませんが、
作りすぎることで起こる“ムダ”は多岐にわたります。
これは製造業に限らず、様々な職種・業種にも当てはまります。
この記事では、TPSにおける「作りすぎのムダ」について、
その意味・起こる問題・具体的な対策までわかりやすく解説します。
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トヨタ生産方式(TPS)の基本的概要については
過去の記事で解説していますのでそちらもぜひご覧ください
作りすぎのムダとは?
「作りすぎのムダ」とは、需要を上回る量を先に作ってしまうことによって発生するムダのことです。
これは、トヨタ生産方式(TPS)が定義する「7つのムダ」の中でも**最も根本的で、他のムダを引き起こす“元凶”**とされています。

・・・・
作りすぎたらムダになるって、そんなの当たり前じゃん
みんなそれくらいわかってるよ

そうだね(笑)言われたら理解はしているけど、
でも、普段の業務でついやってしまっていることないかな?
ムダが発生してしまう例をみてみよう!
例えば、
▪️「会議資料の印刷、何人来るかわからなかったので、20部印刷したが、実際は10部で足りた」
➡️ 紙・時間・印刷コストのムダ。 参加者をきちんと把握していれば防ぐことができた
▪️「注文は100個だけど、追加注文があるかもしれないし、他の注文が入るかもしれないから、
余裕を持って150個作っておこう」
➡️ 保管スペース・管理コスト・人件費のムダ。 追加注文が入ってから作れば良い。
このように、『念の為・足りないよりは余ったほうが・余裕があった方が』と言った考えで
需要を上回る量を先に作ってしまっていませんか?
これは典型的な”作りすぎのムダ”を引き起こしてしまう原因になります。
また、こういった考えで起こった”ムダ”は正しく問題として認識されない傾向にあります。
「余ったけど足りてよかった」「生産が間に合ってよかった」といった考えが生まれるからです。
「念の為」「余裕を持って」という気持ちは大切ですが、
過剰な準備がムダを生み出すこともあると知ることが重要です。
作りすぎのムダがもたらす損失
「作りすぎのムダ」は製造業だけの問題ではなく、
あらゆる業種で“不要な先回り”や“過剰対応”として損失を生んでいます。
以下に、さまざまな業種別に「作りすぎのムダ」がどのような損失をもたらすかを具体的に紹介します。
🏭【製造業】
- 状況:需要予測を見誤り、製品を過剰に生産
- 損失:
- 在庫保管コスト(倉庫代・人件費)
- 陳腐化による廃棄・値下げ販売
- キャッシュフロー悪化(売上より先にコストが発生)
🧾【事務職・ホワイトカラー業務】
- 状況:使うか未定の資料や報告書を大量に作成
- 損失:
- 時間のムダ(本来やるべき業務が後回し)
- 印刷代・紙代・データ管理コスト
- 情報の更新・差し替えの手間が増える
🏨【ホテル・飲食業】
- 状況:予想より多く料理や食材を仕込む
- 損失:
- 食材のロス・廃棄
- 調理時間・光熱費のムダ
- 清掃・衛生管理の負担増
🛒【小売業】
- 状況:売れ筋商品を過剰に発注・陳列
- 損失:
- 在庫の陳腐化・棚卸しの手間
- 値下げ・セールで利益率低下
- 売場スペースの圧迫で他商品の陳列が制限
💻【IT・開発職】
- 状況:本番で使わない機能や資料を“念のため”実装・作成
- 損失:
- コーディングやドキュメント作成の工数ロス
- 無駄なテスト・管理コスト
- 保守運用で不要機能の対応が発生
🎓【教育・研修業界】
- 状況:実際には使われない補助教材を大量に印刷・準備
- 損失:
- 印刷費・資料整理の手間
- 教材が増えることで生徒が混乱
- 廃棄コスト・環境負荷の増加
🏥【医療・介護業界】
- 状況:利用者の予定に対し、人員や薬品を多めに用意
- 損失:
- 人件費の過剰支出
- 使われなかった薬品や備品の廃棄
- スタッフの稼働率低下=現場の不満増
🧑💼【営業職】
- 状況:顧客が求めていない提案資料・サンプルを先回りで作成
- 損失:
- 準備にかけた時間の損失
- クライアントの興味に合わず成果ゼロ
- チーム全体のリソースが偏る
✅ 共通する3つの損失パターン
損失カテゴリ | 内容 |
---|---|
⏱ 時間的損失 | 無駄な作業・修正・待機が発生 |
💰 金銭的損失 | コストの無駄・資源の浪費 |
⚠ 信用・効率損失 | 顧客や現場とのズレ・混乱 |
作りすぎのムダを防ぐ3つの対策
① ジャスト・イン・タイム(JIT)の徹底
「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」
トヨタ式の基本中の基本です。先を読みすぎないことがポイント。
② 見える化で“適正在庫”を把握
在庫や進捗を誰でも確認できる状態にすることで、必要以上の生産を防げます。
③ 標準作業とリードタイム短縮
小ロット・短時間で生産できる体制を作れば、作りすぎのリスクも減ります。
まとめ:作りすぎないことが、ムダを減らす第一歩
「念のため」「余裕を持って」という気持ちは大切ですが、
過剰な準備がムダを生み出すこともあると知ることが重要です。
トヨタ式が教えてくれるのは、「多く作る=正解ではない」という視点。
あなたの職場でも、「これは作りすぎていないか?」と問い直すことで、
業務効率の大きな改善につながるかもしれません。


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