「運ぶことはムダにならないんじゃないの?」そう思った方も少なくないかもしれません
『運搬のムダ』は『作りすぎのムダ』・『手待ちのムダ』に比べて、ムダなイメージが簡単につきにくいため見落とされがちですが、対策も取りやすく効果もすぐに出るため、優先的に取り組むべき”ムダ”です。
この記事では、なぜ運搬がムダと言えるのか、適切な対策方法について解説していきます。
製造業だけでなく、物流・事務・サービス業などの多くの業種で活かすことができます。

運搬のムダとは
”運搬”というと、何かモノを運ぶことをイメージする方が多いと思いますが、
ここで言う運搬とは、『モノ』だけではなく『情報』など目に見えないものを含めたものになります。
つまり運搬のムダとは、《必要以上のモノや情報の移動》が発生することを指します。
『運ぶ』という行為自体は付加価値を生まないため、時間やコストを浪費しやすい領域です。
そのため、TPS(トヨタ生産方式)の中では、生産効率を上げるためできる限り『運ぶ』ことの工数を削減する取り組みを行っています。

どうして『運ぶ』ことが付加価値を生まないの?
運ぶことも立派な仕事の一部だと思うんだけど・・・

『運ぶ』ことが仕事の一部であることは間違いないね!
ただそれ自体に価値があるかというとそうではないんだ。
付加価値とは、『お客様がお金を払ってでも欲しいという行為』つまり、製品やサービスの品質向上につながる行為のことを言うんだ。
『運ぶ』という行為自体は、製品やサービスの質を変えることはない。
だから運搬を最小限にすることで時間やコストの浪費を防ぐことができるんだ!
運搬のムダがもたらす影響
”運搬のムダ”は製造業や物流業だけの話ではありません。
実はあらゆる業種で発生しており、売上や人件費に大きな影響を与えています。
製造・物流業
動線の悪さ
モノを取りに行く距離が長い、1回の作業の中で移動距離が多いなどで、1日の稼働時間の中で「移動に費やしている時間」が増えます。作業効率を上げるためにも、動線を意識して計画を立てましょう。
二重運搬の発生
受入れたモノや商品を一旦別のエリアに仮置きし、再度仕分けエリアに運び直すなど、1回の運搬で済む行為を複数回に分けて運搬することで工数のムダが発生します。これは在庫や仕掛品の管理が適正にできていないために発生しがちです。ジャストインタイムの考え方でムダの削減に取り組みましょう。
オフィス・事務業務
書類の持ち運び
申請書類を紙で回覧することは運搬のムダにあたります。それだけではなく、上司や担当者の不在による手待ちのムダも発生しかねません。デジタル化をすることで、ムダを削減できるだけでなくレポートラインの明確化にもつながるため、業務効率が上がります。
レポートラインの多重化
業務報告や情報共有を違う相手に何度も繰り返し行った経験はありませんか?
例えば、GM(グループマネージャー)→ 室長 → 部長 のように、同じ内容(添削はあるが)なのに何度も報告をするような行為も『(情報の)運搬のムダ』になります。研修報告のようなものでは仕方がありませんが、通常業務の情報共有などではできる限りレポートラインの多重化は無くすようにしましょう。
サービス業(飲食店・ホテルなど)
厨房と客席の距離
製造・物流業の『動線の悪さ』と同じような内容ですが、厨房と客席が遠い場合、従業員の移動距離が増えるだけでなく、せっかくの料理やドリンクの質が落ちてしまうことにもなりかねません。
また、できる限りまとめて運ぼうとして、他の料理を待ってしまうなど、手待ちのムダにも派生します。
注文システム
最近では、席に置いてあるタブレットからや、QRコード読み取りによる自身のスマホからの注文を導入している飲食店も増えています。注文だけでなく、商品の提供に関してもロボットを使った運搬を採用しているお店も見かけます。これもムダの削減のための業務改善です。
運搬のムダの改善方法
モノの手元化
運搬のムダで一番多い原因は《ムダな移動が多い》ことです。
この『ムダな移動』をなくす方法の一つとして、”モノの手元化”があげられます。
使うものを、近く・使いやすい位置におくことでムダな移動を避けることができます。
トヨタの生産ラインでは移動の削減として『 SPS (Set Parts System) 』という方法が用いられています。
これは作業者ごとに必要な部品が入った専用の箱を用意し作業者の近くに置くことで、移動の削減や部品の取り違いによるミスをなくすための取り組みです。
レイアウトの最適化
レイアウトが悪いと、どうしても無駄な運搬が増えてしまいます。これは製造工程や物流倉庫など限られた業種だけではなく、オフィスや飲食店など様々な業種にも当てはまります。
オフィスの場合
例えば、コピー機の位置や打ち合わせ机の場所など、ちょっとしたモノの配置を変えるだけで、行ったり来たりの時間や手待ちの時間を短縮することができます。
飲食店の場合
例えば、レジの位置を店の入り口近くにしておけば、お会計の後そのままお客様のお見送りができ、ムダな移動なくそのままホールの接客に戻れます。
こういった1人や1回に対しては小さな改善が、部署や店舗単位で見れば大きな成果につながります。
まずは気づいたこと・取り組めることから始めることが重要です。
自動化の導入
上述でも少し触れましたが、自動化は多少のコストはかかりますが、『すぐに』『大きな』効果を出すことができる改善手法です。昨今、人口減少・働き手不足の影響もあり、自動化の需要は高まり続けていています。
そのため、様々な業種で会社として自動化に取り組んでいたり、自動化を専門としている企業も多くあります。
ただし、大事なことは目的は『自動化』ではなく、『ムダをなくす』ことだということを忘れないことです。
自動化はあくまで手段であって、いくら自動化をしても効果がなければ意味はありません。
自動化による効果をきちんと考えて上で、適切な対策を取るようにしましょう!
まとめ
▪️『運搬』は付加価値を生まないムダ!
まずはモノ・情報の運搬が付加価値のない”ムダ”であることを理解しましょう。自分や周囲の1日の流れの中でムダな移動や手待ちが発生していないか、意識を持って観察してみることが大事です。
▪️できることからコツコツと!
いきなり大きなことに取り組むのではなく、まずは簡単にできることから始めましょう。
小さな改善でも、チリツモで会社にとっては大きな効果になりますし、改善に取り組む姿勢が評価につながります。まずは自分で計画を立てれる範囲で提案をしてみましょう。
▪️自動化を検討しよう
今後、全ての業種で自動化はますます加速していきます。時代の流れに取り残されないように、一つの手段として自動化の検討をしてみましょう。自動化の提案ができると、上司からの評価が上がるだけでなく自分の視野も広げることができます。


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